マニュアル制作システムの刷新がもたらした業務革新

 

 

 

 

 

 

 

―東京海上日動の決断

個人から法人向けまで、幅広い保険商 品を取り扱っている東京海上日動火災 保険(以下、東京海上日動)において、 課題の1つとなっていたのが各保険商品 のマニュアル制作環境だった。 その課題を解決すべく、東京海上日動は 「WikiWorks」の導入を決断し、マニュ アル制作環境を刷新した。これにより、 どのようなベネフィットが生まれたのだろ うか。このプロジェクトに携わった、5人 のメンバーにお話を伺った。

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東京海上日動火災保険株式会社

IT企画部
数井様 甲斐様 橋本様

東京海上日動システムズ株式会社

営業戦略推進本部
菊地様 加藤様

 

マニュアル制作業務における既存システムの課題 

 火災保険や海上保険、傷害保険、自動車保険など、幅広い種類の損害保険を提供する東京海上日動の業務において、重要な役割を担っているのが各保険の事務手続きの方法などを説明するマニュアルである。社員向けと代理店向けのマニュアルがあり、100名以上の社員がその制作にかかわっている。 _MG_1862

 2016年、そのマニュアル制作の業務に使われていたシステムの刷新が検討されることになる。利用していたパッケージソフトのサポート期限が切れることが大きな理由だったが、それ以外の観点からも見直しが必要だったと、同社の数井敬介氏は振り返った。

「まず課題となっていたのが処理性能です。システムの仕組みが古いこともあり、マニュアルの執筆中に頻繁にフリーズするといった状況でした。その際、ドキュメントが保存されていればよいのですが、そうでなければ改めて作り直す必要があり、業務効率にも影響していました」

 

 東京海上日動システムズの菊地祐一氏は、それ以外にもさまざまな要望が現場から寄せられていたと続ける。_MG_1713

「マニュアルを製作する際、共同で作業を行うことができず、基本的に1人で行う必要があったことも課題でした。複数人で作業を行おうとすると、別の人の作業が終わるのを待たなければなりません。また、執筆したマニュアルの保存に長い時間がかかるのを改善してほしいなど、性能面についてのリクエストも多かったですね」

 

このような課題を解決するべく、新たなシステムの導入に向けた検討が進められた。この際に意識されたのはスムーズな移行である。当然ながら、システムの形が大きく変われば現場を含めた移行の負担も増大してしまう。また機能などが大きく変われば、現場が混乱する恐れもあるだろう。このような影響を避けることが重要だったと橋本弘子氏は述べた。

 

 

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「既存システムの課題を解決しつつ、新しい機能を追加するよりもスムーズに移行することに重点を置きました。そのため、基本的には既存システムを踏襲しつつ、多少やり方などは違っても以前と同じことができる。そういった点を意識して要件定義を進めました」

 

 

 

 

 

 

東京海上日動がWikiWorksを選んだ理由

 要件定義が行われた後、具体的な製品の選定が進められた。その1つとして東京海上日動の目に止まったのが「WikiWorks」である。これはアトラシアン製の情報共有ツールである「Confluence」のアドオン製品であり、マニュアルの制作に必要とされる各種機能を網羅している。

 この製品選定においては、「ベンダーロックインを避けたい」(数井氏)という思いもあった。通常のパッケージソフトの場合、プログラム(ソースコード)は基本的に非公開であり、バグなどの問題があってもベンダーの修正を待つしかない。このようにパッケージソフトの開発元であるベンダーの思惑にとらわれず、システムを運用したいというわけだ。

 これに対してWikiWorks、そしてベースとなるConfluenceは、いずれもソースコードを公開してソフトウェアを開発する手法である「オープンソースソフトウェア(OSS)」となっている。ソースコードが公開されていれば、バグをユーザー自身で修正したり、独自の機能を追加したりすることが可能になる。

 

_MG_1650OSSであればベンダーの影響を抑えられるほか、業務の変化に追従するための機能を拡張する、あるいは新しい技術をシステムに取り込むなど、次を見越した取り組みにおいても有効です。こうした観点から、特に今回のシステムでは積極的にOSSを活用したいと考えていました」

 

製品選定においては、WikiWorksのほかに45社の製品がリストアップされ、フラットな目線で比較が行われている。OSSであることが評価されたWikiWorksだったが、それ以外の点でもアドバンテージがあると考えられた。その1つが編集機能で、ワープロソフトと同様の感覚で編集できる上、従来のシステムと操作性の点で大きな差がなく、スムーズに移行できそうだと考えられた。またWikiWorksには編集画面の内容をそのままアウトプットできる利点があるが、これも評価のポイントとなった。

 

さらに制作したマニュアルのレビューや承認機能、コメント機能など、制作業務に必要となる機能を網羅していたことから、最終的にWikiWorksが選定されている。ただ標準機能では東京海上日動の要件を満たすことができない面もあり、それらについてはナレッジオンデマンドでカスタマイズが行われた。そうした機能の1つに版管理があったと菊地氏は説明する。

 

「通常の版管理機能では、以前の版は新しいドキュメントとの差分という形で保存されることが一般的です。しかし今回のシステムでは差分ではなく、その時点での原本として保存されている必要がありました。保険商品はその時々の状況に応じて商品内容が変わることがありますが、以前の商品内容で契約されているお客様もいらっしゃるため、過去のマニュアルも参照できる状態を維持しなければならないためです。こうした点は標準の版管理機能では対応できない部分だったので、カスタマイズをお願いしました」

 

ユーザーのストレスを解消し、業務効率を大幅に改善

 プロジェクトがスタートしたのは20164月で、6月にWikiWorksが選定された後、本格的に既存システムからの移行作業がスタートした。WikiWorksそのものの導入はスムーズに進んだが、時間がかかったのは既存マニュアルの移行作業だった。しかしこの作業も無事に終了し、20176月にはカットオーバーを迎えている。 

_MG_1582 プロジェクトの途中からかかわったという加藤敦子氏は、既存のシステムに慣れているユーザーがWikiWorksの操作性をどう感じるのかが不安だったという。

 

「ユーザーの方々は従来のシステムの操作が身体に染みついています。実際の説明会でも、以前のシステムでやっていた作業をWikiWorksではどうすればできるのかという点について、多くの質問がありました。WikiWorksに同じ機能がある場合もあれば、違うやり方で実現できる場合もあります。そのあたりを踏まえ、どうすればユーザーの方々がストレスなくマニュアルを制作できるようになるのかに気を配りました」

 

 

 

_MG_1766 ただWikiWorksは直感的に操作できるようにインターフェイスも工夫されており、東京海上日動における導入でも当初の想定よりもユーザーの戸惑いは少なかったようだ。甲斐麻美氏は「直感的にどう操作すればよいのかが分かるのはWikiWorksのよかった点」と話す。

「今回のシステム導入に合わせてWikiWorksの使い方を説明する研修も行いましたが、ほかのものよりも簡単だという声が多数ありました。マニュアルを最初から読まなくても、画面を見てある程度操作できることがユーザーにとっては大きかったのではないでしょうか」

 橋本氏も「今回のシステムのユーザーに対し、何かあったら意見を書き込んでくださいと伝えたのですが、WikiWorksに関する部分は2つ程度しかありませんでした。そうした観点で見ても、WikiWorksはスムーズに導入できたと考えています」と評価する。

 

 実際の導入効果として挙げられたのは、マニュアル制作におけるストレスの軽減、そして業務効率の改善だ。数井氏は「保険商品の改訂において、マニュアルの作成は負担の大きな作業となります。従来のシステムは設計の古さから、使用感の面でユーザーに負担を強いていた部分がありましたが、今回のシステムでこれを解消できたと考えています」と述べる。

 さらに数井氏はナレッジオンデマンドに対して「我々のカスタマイズ要求に対しても迅速に対応していただいた」と評価する。このように、東京海上日動と東京海上日動システムズ、そしてナレッジオンデマンドの密な連携も今回のプロジェクトが成功した大きな要因だろう。

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