煩雑な「マニュアル作成」を効率化:

業務プロセスを変革したら、チームが強くなった

 リコーの挑戦

 

 

 

 

 

 

 

リコーの挑戦

煩雑かつ緻密な作業が必要とされる 「グローバルに展開する製品のマニュア ル作成」。そんな業務を「WikiWorks」 を導入し劇的に効率化したのが、リコー のオフィス機器のサービスマニュアル作 成チームだ。業務プロセスを変えること で、リコーのチームはどのように変わっ たのか?

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株式会社リコー

オフィスプリンティング事業本部 
高井直也氏

CIP事業本部 CP事業センタ
巴正司氏 

オフィスプリンティング事業本部
濱田啓太氏

導入したのは、アトラシアンの情報共有ツール「Confluence」とアドオンの「WikiWorks」

英語をはじめとして各国語への翻訳が必要な、グロー バルに展開する製品のマニュアル作成。作成にあたって は、設計部門や社内のチェック部門、各国の販社など 関係者も多く、煩雑かつ緻密な作業が必要とされる。 そんなプロセスをITツールによって劇的に効率化した のが、リコーのオフィス機器のサービスマニュアル作成 チームだ。導入したのは、アトラシアンの情報共有ツー ル「Confluence」とアドオンの「WikiWorks」。業務プ ロセスを変革することで、チームとしての意識はどう変 わっていったのか。  変革プロジェクトに携わった、オフィスプリンティン グ事業本部商品戦略センター所長の高井直也氏、CIP 事業本部 CP事業センター CP第一事業推進室 販売推 進グループスペシャリストの巴正司氏、オフィスプリン ティング事業本部 商品戦略センター販売計画室の濱田 啓太氏の3人に話をうかがった。

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時代の変化に合わせ、 プロセスを見直す必要に迫られた  

リコーのマニュアル作成チームの業務負荷がピークに 達したのは、2013年にオフィスの複合機のラインアッ プを、カラー・白黒ともに一新したときだった。その数 年前から、少しずつ新機種をリリースする間隔は短くなっ ていた。他社に対する差別化、社会の変化に合わせて、 製品開発のスピードを上げていたのだ。それまで構想を 立ててから1年以上かけて新製品を世に出していたのを、 数カ月短縮。それにあわせて、サービスマニュアルを準 備する期間も短縮されていった。

 

IMG_5015「それまでは、試作~量産開始までの期間に我々はマ ニュアルの英語ドキュメントを作成し、量産している間 に多言語への翻訳をしていました。しかし、スピード感 をもって新製品をリリースするために、この試作~量産 の期間を短縮する開発サイドの改善が行われ、そうする と、我々のドキュメント作成の時間も同じだけ短くなる。 そこに業務負荷が集中してしまっていたんです」(濱田氏)

 

13年時点での、マニュアル作成プロセスは 非常に複雑だった。  

テクニカルサービス部門が、マニュアル作成区と呼ば れる部門に、作成を委託する。そこで作られたマニュア ルを設計部門がチェック後ドラフト版を作成。これを北 米、欧州、アジアの各販社に送付し、各販社から修正 依頼がWordファイルやPDFファイルでバラバラに送ら れてくる。それと同時に社内の英語ネイティブも修正を 入れている……。  

「複数のところからくる修正に、バラバラに対応しなけ ればいけない状態でした。結果的に最新版がどれなのか 分からなくなり、1つ前の状態に『先祖返り』するなどのミ スが発生したり、どこからどんな修正が来ているかを一 括管理できておらず、修正漏れがあったり……。品質が 安定していないというのが、大きな問題でした」(巴氏)

 モデルのマイナーチェンジならまだしも、まったく新 しいモデルを複数同時発表するとなると、マニュアルも 1から複数作成することになる。現場は混乱を極めた。 そして山場を乗り越えた後、現状のプロセスの限界を 痛感し、やり方を一新するという決断に踏み切ったのだ。  

 

「考え方をガラッと変える必要がありました。これまで の方針は、なるべくたくさんの人に関わってもらい、な るべく多くの情報を共有するというもの。余裕があった 時代は、それでよかったんですよね。そして東京の本社 から出す情報は、マニュアルのドキュメントとして完成さ れたものでなければならないと考えていた。でも、そん なことはない。これからは、必要な情報だけを、必要 なタイミングで、必要な人に届ける。マニュアルとしてパッ ケージ化されたものでなく、新しい情報は小出しで共有 する。そう考えて、根本から業務を見直すことにしました」 (高井氏)

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コラボレーションすることで、 効率化と品質向上を同時にかなえる  

 

プロセス刷新のために導入されたのが、アトラシアン の情報共有ツール・Confluenceとマニュアル作成アド オンWikiWorksだ。

 

Confluenceを使えば、サーバ上にある一つの文書を チーム全員で共有しながら編集ができる。これで、一つ の文書に対して、いくつもの版が存在するという状況は なくなった。WikiWorksという文章作成・編集機能に特 化したアドオンを入れることで、Wordで書いているよう なスムーズなインタフェースを利用でき、現状と修正前 を比較して確認することもできるようになった。  さらに、東京本社で英語版のマニュアルを完成させ、 それを各販社で各国語に編集する、というプロセスを改 めた。英語版のマニュアル作成時から、北米、欧州、ア ジアの各販社のメンバーと一緒に作業するようにしたの だ。そして英語版マニュアルの作成に量産終了時まで時 間をかけ、発売後に各国語への翻訳をすると決めた。

 

 しかし、10年以上続いてきたプロセスを変えるのは、 容易ではなかった。大きかったのが各販社からの猛烈 な抵抗だ。「今までは量産前に完成版のマニュアルをく れていたのに、それが量産後にまで遅れるなんて」「作 業を分担して、東京本社が楽をしようとしているのでは ないか」……。高井氏らは、各販社の担当スタッフと話 し合いの場をもち、「これからは、コラボレーションして 皆でマニュアルを作り上げていきたい」と説得した。  

 

「各販社に対して、我々はメーカーとして何をやるべき か、ということを改めて考えたんです。それは、設計者 の思いを伝えることと、正確な数値、技術情報を伝え ること。そこができていればいいと割り切ることにしま した。『マニュアルの文章を作成して、英訳する』という 部分は、我々の本分ではない。だったらそれが得意なと ころに力を貸してもらおうと」(高井氏)  

 

はじめは変化に消極的だった各販社も、WikiWorks でコメントを書き込み、共有しはじめると、一気に協力 的になった。これまでは、マニュアルが完成してから「こ この翻訳はもっといい訳がある」といった指摘のメール を出していたのが、今度は作成時にコメントを入れれば、 それをすぐマニュアルに反映する。共同作業をしている という意識が高まり、以前より、コミュニケーションが 活発になった。

 

 「各販社のメンバーはこれまで、我々が作ったマニュア ルをレビューするという意識だった。それが、プロセス を変更してからは『自分も一緒にマニュアルを作る一員なんだ』という当事者意識が生まれたのだと思います。 足りない部分があれば、それは自分のせいでもある。各 販社の教育担当も、マニュアル準備や現場の教育がス ムーズになったという声が届いています」(巴氏)

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修正数とコストが減少、 モチベーションはアップした  全員が気軽にコメントを書き込めるため、お客様と 接するサービススタッフの要望も吸い上げやすくなった。 集まったコメントは、WikiWorks上にナレッジとして蓄 積され、それを次のマニュアル作成でも生かすことがで きる。こうして効率化と品質の向上、両方がかなえられ ていった。  

 

プロセスを変革した結果、リリース後のマニュアル修 正件数も減少。それまで、10件以上発生していた修正 が、1件前後に抑えられるようになった。作成コストも2 割減。業務負荷も、マニュアル作成期間を長くとれるよ うになったため、ピーク時の負荷が平準化できるように なった。そして何より、業務に対するモチベーションが 変わったという。  

 

「それまでは、量産前に早くマニュアルを完成させな ければというプレッシャーのなか、情報が不確定なまま 作成せざるを得なかった。その結果、リリース後の修 正が多発していました。変更・修正対応で残業も増える し、マイナスな仕事をやっていると精神的な負担が大き かったですね。プロセスを変えてからは、量産時の変更 情報は全て反映することができ、修正件数が減りました。 また、皆でコラボレーションして一つのものを作り上げ るという意識が生まれ、前向きに取り組めるようになっ たんです」(濱田氏)  

 

今回のプロセス変革により、大事なのはパッケージと してのマニュアルではなく、情報そのものであると認識 できるようになったという。巴氏は今後、マニュアルと いう概念すらなくなる可能性があると語る。  

 

WikiWorksで情報を共有、蓄積するようになって、 情報に対する考え方が変わってきました。必要な情報を 小出しで随時共有するほうが、現場の役に立つ。それで あれば、マニュアルはもういらないですよね。必要な情 報に、適切にアクセスできるツールがあればいい。あと は、情報の発信元が東京本社だけである必要もないと 気付きました。各国の販社が独自で作っている資料やそ こに集まる情報も、どんどん共有していけばいい。それ ぞれの得意分野を生かして、よりよくコラボレーションし ていければいいと考えています」(巴氏)  

 

さらに、製品のサービスを提供するにあたり、教育が 本当に必要なのかという問いも生まれてきた。  これまでは、製品の全てを把握しているのは開発をお こなっている東京の本社であり、問題があれば全て情報 は本社に集められるようになっていた。しかし、「ネット ワーク関係のトラブルに関しては現場の人間のほうが詳 しい」という状況が生まれてきた。ピラミッド型で上下に 情報をやり取りするのではなく、横につながって問題を 共有して解決策を探る。本社に報告するよりも、同じよ うな仕事をしている別の国のチームメンバーとSNSで連 絡をとったほうが早いかもしれないのだ。  

 

今回のリコーのマニュアル作成におけるプロセス変革 は、国の壁を超え、本社と販社という枠も超えてコラボ レーションが成立した例として、他業務の参考にもなり 得るはずだ。

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